深夜、古びた図書館に蝋燭の揺れる光が灯っていた。
書棚の影に潜む黒白のハチワレ猫は、静かに訪問者を見つめている。
ここはただの図書館ではなく、失われた物語や記憶が渦巻く「言葉の迷宮」。
本の背表紙を指でなぞると、文字が動き出し、宙に浮かびあがる。
目を離した瞬間、猫の周りには墨のような渦が広がり、不思議な風が吹き込んだ。
訪問者は気づく——この猫はただの猫ではない。
「物語の守護者」と呼ばれる存在だ。
「選ぶのは君次第だよ」と猫の瞳が語りかける。
選んだ本の物語に入ることができるが、一度選べば、戻る道は消えてしまう。
勇気を出して本を手に取るべきか、それとも立ち去るべきか。
猫の背後で巻き起こる墨の渦は、時空を超える扉か、それとも迷宮への招待状なのか。
旅人は深く息を吸い込み、震える手で一冊の本を引き抜いたのだった。